MENU

研修動画の制作は企画が命:外注をスムーズに進めるチェックポイント

研修動画の制作において、「まずは PowerPoint を動画化すれば形になるだろう」と考えてしまう担当者は少なくありません。しかし、制作工程の中で最も重要なのは、実は“企画”です。スライド型・実写型・アニメ型のいずれであっても、企画段階で何をどこまで整理するかが、動画の完成度を大きく左右します。

とはいえ、動画制作に慣れていないと「企画が必要」と気づきにくいものです。では、企画を飛ばして制作に入るとどうなるのでしょうか。次のような問題に直面することがあります。

企画を飛ばした場合における問題事例

たとえば、あなたが「社員3名を出演者とした、ハラスメント防止の実写教材」を作るとします。しかし、出演者は演技の経験がなく台詞を覚えられない、台本は不自然な言い回しが多く修正が必要、カメラは1台しかなく映像のバリエーションが出せない。さらに編集担当の社員が多忙で作業が進まず、ようやく完成したと思えば、上長から「内容が事実と違う」と指摘が入ってしまった……。

これらは、動画制作の基本的な工程、とりわけ「企画」の工程を理解できていなかったり、そこで重要となるポイントを見誤っているために起こります。

逆に言えば、企画段階でポイントを整理しておくだけで、制作の8割はスムーズに進むようになります。企画が明確であれば、外注する場合も“ブレのない発注”ができ、内製であっても“社内で一定以上の品質を実現できる”ようになるのです。

本記事では、動画制作における企画の役割と、動画の仕上がりレベルに応じて企画段階で整理すべきポイントを分かりやすく解説します。まずは、企画が動画の成否をどう左右するのか、その理由を見ていきましょう。

目次

企画は動画成功のカギ

研修動画の成否は企画段階でほぼ決まります。企画では、研修の目的や受講者設定、構成、演出の方針を明確にすることが重要です。曖昧なまま制作に入ると手戻りが増え、クオリティが下がり、結果として時間やコストが膨らむことがあります。

例えば、企画を軽視して制作に入ると次のようなケースが起こりがちです。

  • 手戻りが多くなるケース
    関係者とのすり合わせ不足で修正依頼が頻発し、制作期間が長引く
  • 「あるものをやるだけ」になるケース
    既存資料をそのまま動画化し、受講者に合わせた構成にならない

こうした失敗を回避するためには、企画段階で何を整理すべきかを理解しておくことが不可欠です。次章では、動画制作において共通して整理しておくべき企画のポイントを具体的に確認していきます。

企画段階で整理しておくべきポイント

研修の目的・ゴール

研修動画の企画では、「受講者に何を学んでほしいのか」だけでなく、「どのレベルまで身につけてほしいのか」を明確にすることが重要です。

たとえば同じ「情報セキュリティ研修」でも、

  • 基礎を理解するレベル
    例:パスワード管理や迷惑メール対策など、“知っておけば良い” 内容を押さえてもらう。
  • 実務で判断できるレベル
    例:実際の業務で起こり得るケースを見極め、「自分で判断し対応できる状態」まで引き上げたい。

というように、目的は同じでも求める深さがまったく異なります。

最初にレベル感をしっかり決めておくことで、動画の構成・説明の深さ・演出方針が安定し、制作全体がスムーズに進むようになります。

受講者の属性・レベル・受講環境

  • 対象者の役職や経験年数、業務内容
  • 研修内容の理解度
  • 受講環境(会社で・通勤中に・自宅から、平日・休日)

これによって、使用する言葉遣いや表現方法、演出の工夫を最適化できます。

例えば、初心者向けであれば図解やアニメーションを多めに、経験者向けであれば具体例中心の実写映像を取り入れる、通勤中にスマートフォンで見る場合は縦型動画の検討すると良いでしょう。

コンテンツ方針

  • 既存スライドや資料はどこまで使うか
  • ナレーションや図解の方向性
  • 動画に追加する演出や注釈の有無

ここで注意したいのは、企画の内容や粒度は動画の仕上がりレベルによって大きく変わるという点です。

例えば、簡易なスライド動画であれば、最低限のナレーションの確認だけで企画は十分ですが、高品質な実写やアニメ動画になると、どの情報をどの順番で伝えるか(情報の整理)や、画面にどんな映像・図解・アニメーションを入れるか(演出の工夫)を詳細に企画する必要があります。

具体的な違いやチェック項目は次章で詳しく解説します。

制作体制・素材

  • 出演者の有無
  • 撮影場所や必要な機材
  • 資料や画像、既存動画などの素材

ただし、動画の仕上がりレベルによって準備の粒度は大きく変わります。簡易なスライド動画であれば最小限の素材確認で十分ですが、実写動画では出演者の手配や機材の確認など、チェック項目が増えます。

また、ナレーション収録や映像撮影のように「出演者が発生する動画」の場合は、企画後にスケジュール調整や撮影場所の手配、照明や小道具の確認まで準備する必要が出てきます。

具体的な違いやチェック項目は、次章で動画の仕上がりレベル別に詳しく解説します。

成果測定

最後に、動画の効果をどう測るかを企画段階で考えておきましょう。

  • 理解度テストやアンケートの設計
  • 視聴完了率や行動変容のチェックポイント

成果測定の方法が定まっていると、制作段階で必要な要素(理解度を確認するクイズや、学習内容を振り返るシーンなど)を盛り込むことができます。


企画段階でこれらのポイントを整理しておくと、制作はスムーズに進み、完成後の動画は受講者にとって理解しやすく、学習効果も高いものになります。

また可能であれば、企画段階で検討した内容を、制作前に関係者や上司に共有し、意見を聞いておくことでより精度の高い動画を作ることが可能となります。

次章では、動画種類別・仕上がりレベル別に、企画の粒度や具体的な確認項目を見ていきましょう。

動画タイプ別・仕上がりレベル別の企画粒度とチェック項目

研修動画は、スライド型・実写型・アニメ/モーショングラフィックス型・ハイブリッド型など、種類によって制作手法や注意点が異なります。

さらに、動画の仕上がりレベルによって、企画段階で決めるべき内容や確認項目も大きく変わります。ここでは動画の仕上がりレベルをライト、スタンダード、プレミアムと分類し、動画種類ごとに具体的に解説します。

※動画の尺は5〜10分を想定しています。

スクロールできます
動画タイプ仕上げりレベル企画の粒度・確認項目仕上がりイメージ
スライド+ナレーション型ライト使用する既存スライド・図表の確定
スライドの並び順と構成の確認
ナレーター(社内担当者)の確認
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
図表の軽微な整え(誤字・小さな調整など)の確認
全体尺とスケジュール共有
納品形式や成果測定のすり合わせ
既存のスライド資料・図表・テキストをそのまま活用し、必要最低限のアニメーションとナレーションを付与する動画
スタンダード既存素材と新規制作部分の切り分け
新規図解や追加スライドの要件整理
全体構成案のレビュー
ナレーター(知名度のないナレーターや声優)キャスティング
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
デザイン・トーン&マナーの方向性確認
章ごとのレビューと調整
納品形式や成果測定のすり合わせ
既存資料を基盤としつつ、必要な部分だけ新規の図解やスライドを追加した、学習効果を意識したスライド動画
プレミアムストーリーラインの策定
全ページのレイアウト設計
図解・アイコン・ビジュアルのデザイン決定
ナレーター(知名度のあるナレーターや声優)キャスティング
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
章ごとの詳細レビュー、全体クオリティチェック
納品形式や成果測定のすり合わせ
すべてのスライド・図解・テキスト・アニメーションを1から制作する高品質演出入りスライド動画
実写型ライト撮影場所の確定(自社で行うケースが多い)
登場者(出演者・講師)の確定
簡易台本(話す内容・流れ)の確認
カメラ台数(基本的には1台)の確認

当日の段取り・進行確認
使用する既存資料や小物の有無チェック
納品形式や成果測定のすり合わせ
講師説明をそのまま撮影するような最小限の撮影で構成するシンプルな実写動画
スタンダード撮影場所・複数シーンの有無確認
登場者のキャスティング(社内人物/外部出演者)
カメラ台数(2〜3台)の決定
スタッフ人数(2〜3名)の決定
簡易構成案・台本の確認
当日の流れ・段取りの詳細確認
必要な小物・背景・資料の確認
納品形式や成果測定のすり合わせ
複数カメラによる撮影と、一定の演出・構成を盛り込んだ、編集された見やすい動画
プレミアムストーリー構成・演出計画の策定
絵コンテまたは指示書の確認
キャスティング(俳優・ナレーター等含む)の確定
撮影場所・ロケハンの実施
カメラ台数・照明・音声体制の確定
スタッフ人数・役割(演出・カメラ・照明・音声・進行等)の明確化
小物・衣装・背景セットの確認
撮影スケジュールの確定と共有
納品形式や成果測定のすり合わせ
ストーリーや演出を含む、映像作品として構築する高品質演出入り動画
アニメ/モーショングラフィックス型ライト章単位の内容確認
ナレーター(社内担当者)の確認
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
テンプレートに当てはめる範囲の確認
アニメーションの大まかな動き(フェード・簡易ズームなど)の確認
スケジュール共有
納品形式や成果測定のすり合わせ
制作会社があらかじめ用意しているテンプレートを使用した簡易アニメ動画
スタンダード既存素材と新規図解制作部分の切り分け
新規図解・追加スライドの指示内容の確認
ナレーター(知名度のないナレーターや声優)キャスティング
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
デザイン方向性の合意
全体構成と章ごとのレビュー
アニメーションの動きのイメージ共有
納品形式や成果測定のすり合わせ
制作会社のテンプレートを活用した部分と、図解を1から作成した部分を組み合わせた動画
プレミアム全体構成・シナリオ・演出方針の策定
キャラクター・背景・図解などのデザイン確定
絵コンテ(または演出指示書)の確認
アニメーションの動き・テンポ・シーン割の確認
ナレーション原稿の精査
シーンごとの詳細レビュー
制作スケジュールと工数の調整
納品形式や成果測定のすり合わせ
すべての図解やアニメーションを1から作成した高品質アニメ動画
ハイブリッド型ライトどの既存素材を使用するか
どの順番で並べるか
必要最低限のナレーション内容の確認
全体の長さと構成の大まかな確認
スケジュール共有
納品形式や成果測定のすり合わせ
既存のテンプレート・スライド・図解など、過去のライトプランで使用してきた素材を組み合わせて構成
スタンダード既存素材と新規制作パートの切り分け
新規で作る図解・カットの要件整理
動画全体の構成案の確認
ナレーター(知名度のないナレーターや声優)
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
デザインテイストの方向性確認
章ごとの進捗レビュー
納品形式や成果測定のすり合わせ
既存素材の組み合わせをベースにしつつ、一部を新規制作する動画
プレミアム企画・構成案の策定とレビュー
全カットの絵コンテ・演出案の確認
図解・キャラクター・背景など全ビジュアルの方向性決定
ナレーター(知名度のあるナレーターや声優)
ナレーション原稿の内容確認
ナレーション収録について
章ごとの詳細レビューとフィードバック
納品形式や成果測定のすり合わせ
全パートを1から制作するフルオリジナル動画

まとめ:研修動画の成功は“企画の質”で決まります

研修動画の制作では、最初に企画をどこまで整理できるかが、完成度や学習効果を大きく左右します。特に動画制作に慣れていない担当者ほど、「とりあえず作り始める」ことで手戻りが発生し、結果的にコストも期間も膨らむケースが多いため、企画段階をスキップしないことが重要です。

また、企画内容は動画の仕上がりレベルによって大きく異なります。

ライトでは既存資料の確認が中心ですが、スタンダードでは追加図解や複数カメラの考慮が必要になり、プレミアムではストーリー設計や演出計画まで踏み込む必要があります。最初に「どの仕上がりレベルを選ぶのか」「どこまでこだわるのか」を明確にすることで、制作は驚くほどスムーズに進みます。

さらに、仕上がりレベルがプレミアムのような高度な動画の場合、企画で考慮する要素は非常に多岐にわたるため、制作は外注の力を借りることをお勧めします。ただし、発注前に自社内で企画をある程度整理しておくことで、その後の制作がスムーズになり、外注費用の最適化にもつながります。もし品質や企画内容がまだ固まっていなくてもご安心ください。

ITBeeでは、企画段階から丁寧にヒアリングを行い、目的・受講者・動画の仕上がりレベルを整理しながら最適な企画設計をご提案します。初めて研修動画を制作される企業様でも、安心して進められるサポート体制をご用意しています。


著者情報

LMSベンダーの株式会社ITBeeが、eラーニングシステム、教材コンテンツなどに関するお役立ち情報をお届けします。eラーニングの導入・活用に、ぜひお役立てください。

目次