研修動画の制作を任されたとき、多くの担当者が特に不安を感じやすいのが「収録・撮影」の工程ではないでしょうか。
台本や構成は事前に検討できる一方で、音声収録や映像撮影は当日の進行や判断が求められる場面が多くあります。そのため外注を検討している方にとっては、「どこまで専門知識が必要なのか」「自分たちが理解しておくべき範囲はどこなのか」が見えにくくなりがちです。
一方、内製を考えている方にとっては、「本当に自分たちだけで対応できるのか」「収録・撮影現場を回しきれるのか」といった不安を感じるケースも少なくありません。
これまでの記事では、研修動画制作の各工程について、動画の種類 × 仕上がりレベルによってやるべきことや注意点がどのように変わるのかを整理してきました。
「研修動画の台本作りガイド:素人でも出来る台本制作のポイント3つ」では、制作工程の中でも「台本作成」にフォーカスし、設計内容がどれほど変わるのかを解説しています。気になる方は、ぜひご覧ください。

しかし、今回ご紹介する音声収録・映像撮影フェーズは、他の工程に比べて専門性が高い工程です。音声の収録のみが求められる場合と、映像と音声とを同時に収めていく場合とでは、必要な機材・準備、当日の進行などが大きく異なります。
そのため本記事では、話し声を録る「音声収録」と、映像を撮る「撮影」を区別して扱い、解説を前編・後編の2回に分けます。今回の前編では、まず「音声の収録のみを行う場合」にフォーカスします。
本記事では、音声収録を主として制作するスライド+ナレーション型、ならびに講師による実写説明型を中心に、収録において最低限チェックすべきポイントを整理します。
※スタジオ撮影や複数カメラを用いる形式については、撮影フェーズとして後編で解説します。
1.収録「前」に最低限チェックしておきたい項目
収録では、台本や構成と異なり、当日の進行や判断がそのまま品質に影響する工程です。特に初めて研修動画を制作する場合、「何を準備すればよいのか」「どこまで気にすればよいのか」が分からず、不安を感じやすいポイントでもあります。
ここでは、収録前に最低限押さえておきたいポイントを3つの観点から整理します。
1-1. 収録当日の進行イメージを事前に固めておく
収録当日は、想定以上に判断や確認が発生します。その場で迷わないためにも、進行のイメージは事前に整理しておくことが重要です。特に以下の点は、収録前に必ず共有しておきましょう。
- 役割分担
- 進行役(スタートの合図だし・区切る場所の指示だし)
- 収録確認(音声・録画のチェック)
- 最終判断を行う担当者
- 休憩・区切りのタイミング
- 何本(何セクション)録ったら休憩するかを決めておく
- 食事休憩が発生する場合は、お弁当の手配の有無や、近くに買いに行ける場所を確認しておく
- 収録の順番
- 基本は冒頭から順番に収録するケースが多い
- ナレーターや講師が複数いる場合は、入り時間や担当パートに合わせて順番が前後することもある
1-2. 機材準備・周辺環境の確認
最低限として、以下の準備と確認は必ず行いましょう。
- エアコンの送風音や外からの車や飛行機の音など、収録場所の周辺環境音に問題がないかチェックする
- 収録機材の充電状況や、録画・録音データの保存容量を事前に確認する
- 当日の進行をスムーズにするために、実際に使用する機材・設定でテスト収録を行う
収録品質で最も差が出やすいのは音声です。画質よりも、音が聞き取りづらいことのほうが、視聴者にとっては大きなストレスになります。
そのため、マイクについてはWebカメラ内蔵マイクではなく、外付けの収音機材を使用することをおすすめします。
簡易的なUSBマイクのほか、ICレコーダーをマイク代わりに使用する方法も有効です。特にICレコーダーは、環境音を拾いにくく、操作も比較的シンプルなため、社内収録では現実的な選択肢の一つです。
なお、音質を最優先する場合は、スタジオを利用するのが最も確実な方法です。防音環境や音響設計が整っているため、収録品質を安定させやすいというメリットがあります。
一方で、社内での内製収録や研修動画など、コストや手間とのバランスを重視するケースでは、数千円〜1万円前後の外付けマイクやICレコーダーを導入するだけでも、音声品質は大きく改善します。
ミキサーなどの高額な音響機材をそろえる必要はなく、まずは「聞き取りやすい音」を安定して収録できる環境を整えることが重要です。
1-3. 事前準備と練習で、収録を止めない
外部に販売する動画であれば、細部までクオリティにこだわる必要があります。
一方、社内向けの研修動画では、品質を担保しつつも、限られた予算や時間の中で制作を完了させる視点が欠かせません。
収録が長引く原因として多いのが、「少し言い間違えた」「イントネーションが気になる」といった理由で、細かく録り直しを重ねてしまうケースです。
プロの話者を起用していない場合、ある程度の言い間違いが発生するのは自然なことでもあります。
そのため、明らかに意味が変わる言い間違い以外は、完璧を求めすぎないくらいの気持ちで臨むと、収録はぐっと進めやすくなります。そして、それ以上に効果的なのが事前練習です。
話者が内容や流れに慣れていれば、言い間違い自体が減り、収録当日の判断や迷いも大きく減らすことができます。
収録をスムーズに進めるためにも、事前に十分な練習時間を確保してもらいましょう。

2. 動画の種類別に見る、収録の進め方と注意点
収録をメインに制作する動画は、スライド+ナレーション型と、講師による実写説明型です。ここでは、今回対象とする2つの動画タイプに絞り、収録時の進め方と注意点を整理していきます。
※ロールプレイやインタビューなど、映像表現を重視する実写動画は撮影フェーズとして次回解説します。
2-1. スライド+ナレーション型
スライドを表示しながら、音声のみを収録する形式です。
<進め方>
- 1スライド、もしくは1つの話題ごとに区切って収録する
- 噛んだ場合は無理に続けず、一度止めて言い直す
- 複数のナレーターが出演する場合は、ナレーターごとにまとめて収録することが多い
※スライドや話題ごとに区切ることで、録り直しや編集がしやすくなる
<注意点>
- エアコンの送風音や外部の環境音が入らない場所で行う
- マイクとの距離を一定に保つ
- 声量や話すスピードを一定にする
2-2. 講師による実写説明型(Webカメラ収録)
講師による実写説明型は、パソコンに接続したカメラ(Webカメラ)で講師を映しながら音声を収録する形式です。
映像を使用する形式ではありますが、ここでは映像演出ではなく、音声収録を中心とした進め方と注意点に絞って解説します。
<進め方>
- Webカメラで講師の上半身を映しながら収録する(画づくりは最小限で問題ない)
- 進め方自体は、スライド+ナレーション型と同様
- 話題ごとに区切って収録し、言い間違いはその場で言い直す
- 編集しやすいように、区切りごとに一呼吸置く
<注意点>
- Webカメラ内蔵マイクは避け、外付けマイクやICレコーダーを使用する
- マイクとの距離を一定に保ち、声量や話すスピードを安定させる
- 話者の動きが大きいと音量差が出やすいため、姿勢や位置を固定する
※ カメラワークや画角、照明など、映像表現に関するポイントは、撮影フェーズとして次回解説します。
3.内製でよく起こる収録の失敗例
収録の基本的な進め方を理解していても、実際の現場では「想定外の抜け・うっかり」による失敗が起こりがちです。
ここでは、実際の収録現場でよく見られる失敗例を簡単にご紹介します。
- 収録した音声をその場で確認していたものの、エアコンのノイズに気づかず、編集段階で初めて問題が発覚する
- 休憩後に収録を再開した際、マイクの電源が入っておらず、後半パートの音声が録れていなかった
このようなトラブルの多くは、収録当日の判断ミスというよりも、事前のすり合わせ不足によって起こります。
2章で整理した事前の確認項目を踏まえ、収録前の準備を丁寧に行うことが重要です。
また、収録現場に見学に来ていた上長から「この言い回しは変では?」と指摘が入り、収録が中断してしまうケースも少なくありません。こうした事態は、あらかじめ台本を関係者に共有し、表現についての確認や合意を取っておくことで解消できます。
4.まとめ:不安なく研修動画の収録を進めるために
音声収録は、しっかりと準備をすることで、不測の事態が起きにくくすることができます。しかし、準備を怠り、現場で何とかすればいいと考えれば、予定時間内に収録し切れない状況に陥ることが充分考えられます。
「現場で何とかする」という言葉は、魔法のフレーズではありません。それは、経験を積んだプロが、収録当日の段取りやリスクをあらかじめ想定したうえで発する言葉です。
慣れないうちは、収録の事前準備に大きな負担を感じることも少なくありません。そうした場合や、少しでも不安がある場合は、無理に内製で抱え込まず、早い段階でプロに相談することが結果的に近道になります。
ITBeeは、さまざまな規模・形式の研修動画収録に携わってきました。現場で起こりがちな課題を把握しているからこそ、安心して収録に臨める進め方をご提案できます。「失敗しない収録」を実現したい方は、ぜひ一度ITBeeにご相談ください。


