
研修動画を外注する前に、社内でやるべき準備を整えておくことが、成功のカギです。
準備が不十分なまま制作会社を選んでしまうと、「現場のニーズとズレていた」「スケジュールが崩れた」「予算の見積もりが合わなかった」といったトラブルにつながることが少なくありません。
たとえば、誰に向けた研修なのか、どこでどのように視聴するのかが整理されていないと、制作会社とのすり合わせに時間がかかり、結果的に納期遅れや追加コストが発生します。
この記事では、制作会社を比較・検討する前に押さえておきたい「社内準備のポイント」を具体的に解説します。
外注を成功させたい方は、まずこの内容をチェックしてから動き出しましょう
1. 外注する前に確認しておくべき5つのポイント
制作会社を探す前に、まず社内で確認しておきたいのが「そもそも自社は、外注する準備が整っているか?」という点です。
目的や前提が曖昧なまま相談を始めてしまうと、方向性がぶれたり、スケジュールや予算でのトラブルにもつながります。
これは、たとえば「何も考えずに携帯ショップに行って、オプションが盛り盛りになったプランを契約してしまう」といった状況に似ています。
相手に「選ばせてしまう」前に、こちらが「選ぶ準備」を整えておくことが、後悔しないための第一歩です。
ここでは、外注を成功させるために事前に整理しておくべき5つのポイントをご紹介します。
1-1. 研修動画を活用する目的の明確化
まず確認したいのは「なぜ研修動画を作るのか? 何を解決したいのか?」という目的です。
例:
- 現場で説明のばらつきが出ている → 標準化されたマニュアル動画で統一したい
- 法令研修を一律に実施したい → 確実に視聴させ、記録を残せる形式が必要
目的が曖昧なままだと、制作会社も「何を作ればいいか」判断できず、構成や演出にズレが出やすくなります。
1-2. 視聴者と視聴環境の整理する
動画の内容や構成は、視聴する相手・環境・デバイスによって大きく変わります。
制作会社に正確な条件を伝えるためにも、以下の3点は社内であらかじめ整理しておくことをおすすめします。
3-2-1.誰が見るのか(視聴者の属性)
例:
- 新入社員 → 専門用語を避け、ステップ形式で丁寧に
- 中堅社員 → 現場事例や判断を求める内容を中心に
- 管理職 → 方針理解やマネジメント視点にフォーカス
3-2-2.どこで見るのか(視聴環境)
例:
- オフィスのデスク → 比較的集中しやすいが、音声が出せないこともあるため字幕対応があると安心
- 移動中 →スマホ視聴を想定。短尺+字幕付きが望ましい
- 自宅 → 生活音などで集中しにくい場合もあるため、短尺で区切りのある構成が効果的
- 研修施設や会議室 → 落ち着いた環境で、長尺コンテンツにも対応しやすい
3-2-3.どうやって見るのか(使用デバイス・再生方法)
例:
- スマホ → 小さい文字や複雑な画面は避ける
- PC → 長尺・細かい図解にも対応しやすい
- LMSや社内ポータル → 対応ファイル形式やUIとの相性も要確認
このように、誰に・どこで・どう見せるかを具体的にイメージしておくことで、動画の設計精度が大きく変わります。
1-3. 予算とスケジュールの把握
外注時にトラブルになりやすいのが、「思っていたより高かった」「間に合わなかった」という予算と納期に関する行き違いです。
あらかじめ社内で以下のような基準を持っておくことが、無駄な往復や追加調整を防ぐ鍵になります。
1-3-1.希望の予算感はざっくりでも数字にする
例:
- 「上限50万円まで」「できれば30万円以内」など目安を明示
- 「1本あたりの単価」「全体のパッケージ予算」で分けて検討する
1-3-2.希望納期は逆算で考える
例:
- 研修実施日から逆算して、撮影・編集・確認に必要な期間を見積もる
- 社内確認・上申にかかる日数も含めてスケジューリングする
1-3-3.追加料金が発生しやすい項目を事前に確認
例:
- ナレーションや字幕の追加費用
- 撮影時間の延長、修正回数の制限
- LMS形式への変換・書き出し費用
制作会社によって「どこまでが基本料金か」は異なります。
初回の見積もり時に「これは含まれますか?」と具体的に聞いておくことが、後のトラブル防止につながります。
1-4. 社内体制と決裁フローの見える化
動画制作をスムーズに進めるには、社内の意思決定や決済フローをあらかじめ整理しておくことが不可欠です。
特に「想定外のストップ」は、プロジェクトの遅延やクオリティ低下の原因になりやすいため注意が必要です。
1-4-1.よくある想定外のストップ例
- 撮影許可が下りない
→ ロケ地や社内施設での撮影に「総務の許可が必要だった」ことを後から知る - 原稿やナレーションに部門ごとのチェックが入る
→ 人事・広報・法務など、各部署で意見が割れ、原稿確定までに大幅な遅れが出る - 決裁者が忙しくて確認が進まない
→ 最終承認者が役員などの場合、チェックのタイミングを押さえておかないと、1〜2週間単位で止まることも - 誰が社内責任者かが曖昧
→ 制作中に「これ誰の承認が必要なの?」と混乱が起き、動画の方向性が迷走する
1-4-2.対応のポイント
- 関与メンバー・承認ルート・確認ステップを事前に「見える化」しておく
- 制作スケジュールに社内調整の余白をしっかり見込む
- 初回打ち合わせ時点で、制作会社にも社内構造や決裁フローを共有しておく
動画制作は「社外とのやりとり」だけでなく、「社内の交通整理」こそが鍵を握る場面が多くあります。
この段階での準備が、後の進行を左右する重要ポイントです。
1-5. 納品後の運用イメージ
完成後、どのように社内で使われ、評価され、運用されていくのかまで逆算しておくと、制作段階での判断がブレません。
- LMSに組み込んで履歴管理 → ファイル形式・尺の制限を確認
- 一部だけ切り出して使いたい → 編集しやすい構成にする
- 毎年更新を前提 → 汎用パートと差し替えパートを分ける
動画制作の外注の目的は「いい動画を作ること」ではなく、「社員の理解を深め、現場での行動変容につなげること」です。
だからこそ、「納品=スタート地点」として捉える意識が欠かせません。
2. 制作会社を選ぶ前に準備が必要な理由
最近は、社員研修に動画を取り入れる企業が増え、制作を外注するケースも一般的になってきました。
ですが、「動画が完成する」=「研修がうまくいく」とは限らず、トラブルが起きることも少なくありません。
例えば、
- 現場で「見てもらえない」動画になってしまった
- 社内調整や確認に時間がかかり、想定より工数がかさんだ
- 見積もり以上に費用が増えてしまい、上層部から突っ込まれた
というケースがあり、その原因の多くは、制作会社の選定ミスや、発注前の準備不足があります。
見た目や価格だけで選んでしまい、「なんとなく良さそうだったから」で進めてしまうと、時間もお金も無駄になる可能性があります。
次章では、そうした「よくある失敗」の具体例を見ていきましょう。
3. 研修動画の外注でよくある失敗
3-1. 現場ニーズとズレた内容
「動画を外注したのに、現場で活用されなかった…」 そんな声を耳にすることがあります。
原因の一つは、動画の内容が現場の課題や視聴者のレベルに合っていないこと。
誰に向けた動画なのか、どんな場面で使われるのかが曖昧なまま制作を進めてしまうと、内容の難易度や伝え方がちぐはぐになりがちです。
現場の状況や伝える相手に合っていない動画は、 「何が言いたいのか分からない」「実務にどう使えばいいのか分からない」と受け取られ、 結果的に使われずに終わってしまうこともあります。
3-2. 進行トラブルでスケジュールが崩れる
予定通り進むはずだったプロジェクトが、思わぬところで滞ることがあります。
特に、社内確認や調整が想定より時間を取るケースは多く見られます。
- 撮影日が直前で変更となったが、関係者の再調整が難航し、結果として撮影は大幅に延期されることになった
- 原稿チェックで関係部署からの差し戻しが入り、なかなか構成が決まらず制作のスタートが遅れた
- 最終承認者の確認が撮影直前になり、大幅な修正が入り、撮影が一時ストップする事態に
このようなトラブルは、制作会社との連携以前に、社内での確認体制や決裁ルートが曖昧だったことが原因であるケースが多くあります。
3-3. 見積もり通りにいかないリスクに要注意
見積もりは出ているから大丈夫。
そう思っていたのに、進行中に想定外の費用が発生し、稟議をやり直すことになってしまうケースがあります。
たとえば、
- ナレーションや字幕、形式変換などが見積もりに含まれておらず、後から追加費用がかかってしまった
- 社内収録を想定していたが、「やっぱりナレーターをお願いしたい」と方針が変わり、見積もりを出し直して稟議をやり直すことに
前者の原因は、
見積もり段階で「どこまでが基本で、どこからがオプションか」を確認していなかったこと
後者の原因は、
社内の方針が固まっていない状態で見積もりを出してしまったことが背景にあります。
あとから費用が膨らんでしまうと、教育担当者としての信頼にも関わるため、最初のすり合わせと見通しの共有がとても重要です。
4. まとめ|制作会社を選ぶ前に「準備」を整えよう
研修動画を外注する際、「どの制作会社に頼むか?」は確かに重要です。
ですが、いきなり比較検討に入る前に、自社として「選ぶ準備」ができているかどうかを確認することが、成功の鍵を握っています。
実際、多くの失敗は「選んだ会社の問題」ではなく、「選ぶ前の準備不足」が原因です。
だからこそ、発注前の整理が重要なのです。
制作会社とのやりとりをスムーズにし、「使われる動画」「成果につながる研修」にするためにも、
- 研修動画の目的は明確か?
- 視聴者や視聴環境は整理できているか?
- 予算とスケジュールの見通しは立っているか?
- 社内の関係者とフローは共有できているか?
- 納品後の使い方はイメージできているか?
この5つをあらかじめ確認しておきましょう。
おすすめ会社を比較する前に、自社が選べる状態かどうか”を整えること。
それが、外注成功のいちばん確実なスタートラインです。